プロセスこそ大事なのだ

トリノ五輪を見ていろいろと思うところがあったのだが、多分それを文章にするとやっぱり長くなりそうだし、気分が乗らないと書いててしんどくなるのでおそらく書かない。けれど、要点だけは残そうと思う。ちなみに焼き直しなのは勘弁してね。ちょっと書き足したけれどさ。
一番強く思ったのが、過程の大切さだ。

例えば、女子カーリングでは決勝トーナメント進出はならなかったし、当然メダルも取れなかった。しかし、あそこまで真剣に見ることが出来たのは、カーリングそのものが面白いというのもあるのだろうが、9戦を通じてチーム青森の苦悩も喜びも共有することが出来たのだからだと思う。

マスコミがメダルメダル騒ぐのは、そこしか見所が無いからではないのか。男女ともに惜しくも4位に終わったスピードスケート(500M)では2回滑っての合計タイムで競っていて、それは単純に誰が一番早く滑れるのかを争うものであるけれど、見る側にとってもそこで完結する。早く滑るためには様々な技術があるはずだがそこを理解してスケーティングを見る視聴者などほとんどいないだろう。速いのか遅いのか、一般人にはその結果しかしか見所が無い。メダルを取れたときにはあんなに熱狂するくせに、取れなかったときの冷めっぷり、その落差はどうだろうか。

別に勝ち負けを意識するのは悪いことでははない。が、そこしか見所が見出せない、視聴者に見出させないマスコミの姿勢にまず疑問を持つべきではなかろうか。

その点、カーリングは素晴らしい中継をしてくれたと思う。カーリングという、かすかに名前を聞いたことがあるかないか程度のマイナー競技には違いないものを、それを毎回3時間弱の時間を取って日本戦全9試合を放送したのだ。NHKのその決断にまず感謝したい。

もちろん、実況と解説が素晴らしかった点を忘れてはならない。NHK側には、過去の五輪中継の経験からカーリングが充分オンエアに値するゲーム性を持つものだという確信はあったというのが取り上げ方から伺えるけれど、それを全く知らない素人に面白みをどう伝えるかはやはり心を砕くところだろう。

幸い、時間はたっぷりあった。ある程度は詳しく解説する時間も取れるし、解説されていたプランもとりあえず我々を納得させてくれるものであった。そして交互に石を投じるという展開のスピードがこれにうまくマッチしていたと思う。視聴者も一緒に考え、選手やストーンの挙動を見守り、また考える、あたかも自分がプレイヤーになったかのように錯覚した人もいるかもしれない。経験者でもないズブの素人がふらーっと立ち寄っただけなのに、これほど臨場感を味わえるというのはスポーツ観戦として重要な点であるのに違いない。

俺は、普段は日本代表戦やUEFAなどサッカーやボクシングをそこそこ見るのだけれど、ここまで熱心には見ていない。熱狂はするけれど、ゲームを分かってないままに見たままを楽しんでいるだけだったのだ。ボールがゴールに吸い込まれるように入る様、パンチがクリーンヒットしてダウンする様、それはそれで楽しめる。ただ、さっきも言ったように素人には細かな技術的な精査のしようが無いし、解説も素人を助けるには具体性に欠け力不足なのは否めない。細かな解説があるときもあるが、それは大抵プレー直後、試合直後に行われるものでこのわずかなタイムラグがもう一つ一体感を得られない理由なのかもしれない。結局、ひいきしている方(大抵日本人のほうだけど)が負けると、いかに内容が良くて仕方ない負けだとしても「よえー」の一言で済ましてしまっているなと、振り返ると俺も駄目な見方をしているのだ。

それでも、見ている側がそれでいいのなら、熱狂だけが目的なら放送する側としてもそれにかなうようにやればいいだけの話だ。こういうスタンスが悪いなどと一概に言えない。しかし、もう一歩踏み込んでスポーツの本質を感じさせてくれる放送というのは、視聴者にとってはより面白さを味わえるだろうという点で、またプレーヤー側にとっても自分たちをより理解してもらえるという点で理想的な放送といえるのでないか。

今回のカーリングは本当に楽しめた。見てて楽しかった。NHKにもう一度ありがとうと言いたい。

ちなみに、見てもらうにはまずどうやって客寄せするかを考えないといけないところだが、それは言うまでも無いことだと思う。俺は世界のまりりんに釣られたわけだし。いや、俺だけでは無いはずだ。刈屋アナがまりりんを世界の放送局にまで押していたのも、解説の小林さんが思わず「見えますね」(続けて刈屋アナも「見えますよね」)と言っちゃたのも、NHK自身までもやはりチーム青森のキュートさに釣られたんだと自信を持って言い切れる。だってチーム長野が出て同じ熱心さで見れるとは思えねえしw

以上、簡単ではありますが、スポーツは結果じゃないというのをしみじみ実感出来た五輪観戦でした。